大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)5626号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人三名の弁護人前堀政幸及び被告人榎正年の弁護人表権七の各上告趣意各第一点について。

論旨は憲法違反を主張するけれども、その実質は、経済関係罰則の整備に関する法律二条に関する原審の解釈の誤りを主張するものであって、刑訴四〇五条の上告適法の理由にあたらない。(同法二条の「職務」とは、同条の定める会社、組合または、これらに準ずるものの役職員の職務であれば同条のいう事業または業務にかかわりなく、すべてを含むと解すべきではないが、本来の独占的または、統制的性質をも事務に局限すべきでなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務を含むものであることは、当裁判所の判例(昭和二八年(あ)四三八号事件、同三〇年五月一〇日第三小法廷判決)とするところであるのみならず、所論の手形貸付業務は、原判示のごとく、金融緊急措置令六条、同施行規則一三条二項及び昭和二二年三月一日大蔵省告示三七号金融機関資金融通準則に基いて行われるものであって、経済の統制を目的とする法令に依り行う「統制に関する業務」であって、被告人はかかる業務を為す銀行の職員として、その業務に属する職務を担当しているものというべきである。)

前堀弁護人、表弁護人の各上告趣意各第二点について。

右は違憲を主張するところがあるけれども、いずれも、事実誤認、単なる法令違反の主張に帰するのであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例